制作の特色
ひとつひとつ丁寧に、
手仕事で仕上げるから、優しい想いがこもります。
『災いを追い出し、福を招く』
表は、ほうきを持ってギョロリ、裏は手で招いてニッコリ。
災いを退散させ幸福を招く、表裏一体型の招き猫です。
怒った顔を前に置くのが基本。
物語の発祥の寺である西福寺のゆかりの縁起物です。
縁起物ですから、「追い出し猫」はひとつ一つ丁寧に手づくり。
型抜き、型調整、素焼き、磨き、絵付けのすべてが人のぬくもりの中から生まれます。
型抜きから磨きまでの作業は、宮若にある授産施設の方々が受け持ちます。
型抜きとはいえ、調整や磨きあげは人の力、熟練の技なくしては、追い出し猫に成りません。
型抜きから抜き出されたばかりの時は土人形にしか見えませんが、ひとつ、またひとつと手が加えられるにつれ、いきいきとした追い出し猫へと姿を変えていきます。
磨きあげられた猫は、絵付けもまだなのに今にも動き出しそうな躍動感にあふれています。
かたちが整うと次は絵付け。
これもすべて手描き。
しかも下書きをしたり、型をあてて描いたりするのではなく白地の上に直接筆を走らせていきます。
すうっ、すうっと流れる筆の運びの美しさは、思わず息を止めて見入ってしまいます。
ものすごい集中力と緊張感の中から、三毛猫、黒ぶち、シマ模様、さくら模様などの個性豊かな追い出し猫達が飛び出してきます。
緊張がとぎれると、怒りの目に力が、招きの微笑みに優しさが宿らないのだそうです。
「縁起物ですから、やはり災いを追い出して、福を招き入れてくれる猫になってくれたらという思いで描きます。
だから本当に何匹描いてもなれるということはありません。いつも緊張しています。」
型作りから、絵付け、包装まですべて宮若の人たちの想いがこもる「追い出し猫」
そのため一日に多くても二十個程度しか作れないのです。
近年人気を呼び生産が追い付かない時もありますが、機械生産や印刷には、決してしたくないとのこと。
「手づくりじゃないと、追い出し猫達の想いは伝わりませんから」と誰もが語ります。